水泳のバイオメカニクス
水泳とは、字の名の如く『水の中を泳ぐこと』であり、コーチや指導者は
水の特性を十分理解することで、考え方や指導に大きな効果をもたらす。
水の特性としては
- 密度
- 水圧
- 浮力
- 熱伝導率
を挙げることができる。
密度
真水の密度は約4℃で
水の密度を基準(1.0)として、密度の大きさは比重として表される。
水は空気と比較すると密度がとても高いため、抵抗に関して大きな違いが生じる。
陸上と同じ姿勢、同じ速度で水中を移動しようとすると抵抗は約800倍。
それゆえ、水中では陸上ほど早く移動することはできないが、その特性(抵抗)を利用することで
水を押した反作用の力で前に進むことが可能になる。
水と比較した比重一覧
- 海水・・・約1.03
- 人体・・・約1.03(息を吐き切った状態)
- 骨・・・約2.01
- 脂肪・・・約0.92
- 筋肉・・・約1.08
※男性は沈みやすい・女性は浮きやすいの真実は?
水圧
水中のある一点では水圧は上下左右あらゆる方向に同じ強さで働く。
水中では深く潜ると耳が痛くなったり圧迫感を感じることがあるが
それは水の圧力による作用が原因である。
水中では
※1気圧=海抜0m付近での大気圧。気温15℃の状態で1㎠あたり約1.0kgの圧力が加わっている。
浮力
浮力とは、水などの流体中にある物体に重力とは逆の方向に作用する力である。
物体は流体から圧力を受けている。
このとき圧力は物体の上と下では異なり、下から受ける力の方が大きい。
この物体が受ける上下の力の差が浮力である。すなわち、物体には上向きの力が作用する。
アルキメデスの原理を適応した場合、身体の容積が60ℓの人が水中に入ると
約60kgの浮力を受けることになる。
※空気も流体であり浮力は発生するが、密度がとても小さいので感じることはできない。
熱伝導率
同じ気温の水と空気でも温度に違いを感じるのは、この熱伝導率が
空気と比較すると水中の方が高いからである。(空気の約23倍)
運動時に体内では大量の熱エネルギーが生産されるため、水温が
高ければ高いほど十分に熱が放出されず、運動が不可能になる。
逆に水温が低い場合、水中に大量の熱エネルギーを放出しないとならないため
体温を一定に保持する働きとして、体内では大量の熱産生が必要になる。
プールに入った時に体が震えるのは、筋を収縮させて熱産生を促進しているからである。
参考文献
・水泳コーチ教本
・スイミングファステスト